捕らえ所が難しいが面白い『Another』

録り溜めしてた『Another』を先週の水曜ぐらいに見終わりました、凄い面白かったです。

恐らく視聴した殆どの方々が「捕らえ所のない」という感想を抱いたに違いないと、私は思っております。理由としては、ホラー作品にしてはあまり怖くなく、ミステリにしては超常現象ともはや反則気味のトリックを駆使していて、ラスト付近をバトルロワイアルモノと見るにしても残酷描写にどことなくギャグテイストが混じっていたりもした。ギャグティストの例でいえば、例えば「兄貴の仇」と見崎鳴に襲いかかった小椋由美がラストでブリッ死していたりと、色んな意味で何かがおかしい。ちなみに小椋由美がこんな死に方をしたので、今後は夜見山では基本的に災厄の起る年ではバックドロップをすることが禁止になったらしいです……もちろんこれは嘘ですが、夜見山なら現実を凌駕するような死に方をするので強ち嘘と言い切れないのが怖いところです。


色んな見方を挙げてみましたが、私が特に注目したのが「青春(軟派)アニメ」として見た場合の『Another』でしょうか。この辺りの視点として id:tatsu2 さんのこのエントリが分かり易く、また興味深いことが書かれています。

青春(軟派)アニメとしての「Another」 - subculic
http://d.hatena.ne.jp/tatsu2/20120323/p1

というか、実は私の言いたい事の約九割は既に書かれているので、私のエントリ意味無くない? と突っ込んではいけない、突っ込んではいけないのだ……!


そして「青春(軟派)アニメ」としてざっと見た感じでは、ヒロインに対しての力の入れ具合が、最初の方は見崎鳴にあたっていました。その結果ネットでの「可愛い(ブヒれる)ヒロイン」が語られる上で、あの夏で待ってるの谷川柑菜ぐらいのレベルまで語られたような気がします。しかし終盤はその描写も影を潜め、ストーリーから描写まで赤沢泉美に焦点が当たっていました。

その証拠に、Wikipediaから引用してみると……

また、赤沢をはじめとする生徒の思慕や嫉妬などの恋愛感情を思わせる描写や、生徒間の友情や反感を示す描写など、学園青春ものとしての側面が原作より強調されており、合宿での混乱もそれらの感情の発露の場としてより詳細に描かれている。
 
Another - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/Another

あれー、あれれー、もう私が言いたいこと九割九分出尽くしちゃったよー?


……と、おちゃらけるのは良いんですが、更に詳しく「思慕や嫉妬などの恋愛感情を思わせる描写」を説明すると、まず赤沢さんが現象の対策として「居ないもの」が効果が無いと分かるとすぐさま榊原恒一に接近したり、海に行く際はちゃっかり恒一の隣に座ったり、過去に恒一に出会った頃の夢を見たり、見崎鳴に謝罪を要求したり、その際に恒一が鳴を擁護した際に歯ぎしりをしたり、SAN値ゼロ半狂乱の杉浦多佳子に「泉美のお気に入り」という発言と共に恒一が見逃されていたりと、相当の伏線があります。

そして最終話において赤沢さんが恒一に一年半前のことを覚えているか問うシーンがあるが、恒一覚えていなかった。その理由は一年半前に夜見山に玲子さんの葬式に来ていたので、記憶が改ざんされていて恒一は覚えていなかった。そしてここをよくよく考えれば、第1話において赤沢さんが「あなた本当に一年半前に夜見山に来てなかった?」と聞いていたのは、赤沢さんが恒一に一目惚れしたのもこの一年半前のことだったからだ……!!

この用意周到な伏線と、その回収方法……恐ろしい、恐ろしいぞ『Another』!! そして一気に回収される様、ホント最終話の赤沢さんの死に際はこの伏線回収のカタルシスで震えそうになりましたよ……!! このように起こる出来事は残酷なのに、ストーリーは美しくて、この非対称性が綺麗すぎる……捕らえ所が難しいのですが、細かいところを見通していけば実は面白いと思えるシーンがある……『Another』はそんなアニメだったと思います。


ちなみに私が好きな話数は5話の「Build limbs -拡散-」6話の「Face to face -二人-」そして一番好きな9話「Body paint -連鎖-」ですね。9話は理由は分からないけど、他の回と違って細かいところがえらい作り込まれてて、正直真面目に見ていた人はこの回凄い楽しかったんじゃないかなーとまで思えるレベル。正直誰が誰だか完全に把握できればこの回は楽しみ切れたのに、我ながら勿体ないことをしてしまった……!!