鋼の錬金術師におけるキンブリーの、去り際における彼の美学について

エドとプライドの対決では、これまで私が見落としていた「ツケ」を払わされてしまい、そこがとても悔しかった。


と言いますのも、私に取りましてキンブリーは変態殺戮者でドSという認識しかしておりませんでした。ですからエドの体を乗っ取ろうとした時キンブリーが現れて結果的にエドを助けたシーンで、キンブリーが何故プライドの行動を制止したのか、何故エドがプライドの本体を捕まえたとき笑顔になったのか、よく分からずに終わってしまいました。


ここは、これまでのキンブリーの行動から彼の美学や生き方を良く理解していれば恐らく感動のシーンだったと思うのですが、そういう準備を怠った結果、中途半端な認識しか持てませんでした、残念すぎます。


鋼の錬金術師 第61話『神を呑みこみし者』 - 海の見聞記
http://d.hatena.ne.jp/marine-marine/20100614/1276446686

本当はコメント項にでも書こうと思ったのですが、正直長すぎるので、こっちに書いてみました。


>「キンブリーが何故プライドの行動を制止したのか」

これは案外簡単です、キンブリーは過去にこんなことを言ってました。

「戦い敵を倒すのがあなた方兵士の本分。人の命を助けるのが医者の本分。
この人達は本分を貫き通したのですよ。私は意志を貫き通す人が好きです。」

これを踏まえると、プライドは自身が見下していた人間を殻として利用しようとする。それが本分に反すると彼は考えたのでしょう。また、もしかしたらプライドの中の「お父様に対する忠誠」のゆらぎがキンブリーには見えてたのかもしれません。


>「何故エドがプライドの本体を捕まえたとき笑顔になったのか」

ここは過去のエドvsキンブリーのことを踏まえると、分かりやすいかもしれません。以下海さんの過去感想から拝借させていただきます。

キンブリーに「甘い」と言われながらも、その甘さのためなら傷つく事も、あるいは「死」すらも覚悟をするエドだから、キンブリーやホムンクルスたちは決して得ることのできない「人」が集まってくるのだ、そしてそれこそがこの世の真理「ひとりでは生きて往けない」に辿り着く道なのではないかと、画面のこちらで胸を熱くしておりました(笑) ・・・深読みってレベルを通り越してもはや妄想でございますよ。


鋼の錬金術師 第41話『奈落』 - 海の見聞記
http://d.hatena.ne.jp/marine-marine/20100125/1264347804

過去にキンブリーが「その甘さが命取り」だと指摘し、致命傷を負わせた。それなのにも関わらず、這い上がってきて尚且つ「甘い」部分がそのままのエド。これはキンブリーから見れば「本分」に準じてることになります。


そして、42話でエドが致命傷から這い上がってきたところで、キメラさん達の心が揺さ振られたのと同じように、ここに来てなお「本分」を全うしようとするエドに、キンブリーも若しかしたら揺さ振られたのかもしれません。だからそこで怯むプライドに対し「貴方はエドワード=エルリックの事を何も分かってはいない」と指摘したのでしょう。


しかし、彼にも「本分」があり、ここで自身が消えることに対しエドに対し気を病ませることは、彼にとっての「本分」にも反するのでしょう。そうすると、ひっそりの消えることが、エドに対しての「本分」に敬意を示すと同時に、自身の「本分」を貫き通す、最高の手段と考えたのかもしれません。