氷菓 #3『事情ある古典部の末裔』

古典部文集を探す為に、元古典部の部室だった壁新聞部の部室で文集をめぐり、奉太郎は壁新聞部の部長と頭脳戦まがいのことを行うことになった、という話。


頭脳戦というのは言い過ぎかもしれませんが、奉太郎が「薬品金庫を探す為に先生に手伝ってもらう、でも今回は一旦帰えるので、もし見つかったら古典部の部室に置いておいて下さい」と、かなり回りくどい形で壁新聞部の部長を脅し、帰り際に「悪いとは思ってますよ」と謝りフォローを入れる、この一連の流れを頭脳戦以外に何と言えばいいのか思い付きません。更に壁新聞部の部長もこの一連の流れだけで自分が脅されている事を察知したのが凄いと思うんですよ。確かに身に覚えがあるとはいえこの一連の会話のなかに「タバコ」を連想させるようなワードが何一つ無かったということを……!!

タバコに関してはこの作品に問わず、未成年の喫煙は法律で禁止されているので、結構な問題になります。なので扱いが難しく、今回の話でも壁新聞部の部長が直接喫煙をしていた描写は一切出てきません。製作側の方でもタバコを吸うシーンを直接描写したくないという側面もあるかもしれません。よって奉太郎の口から喋らせると共に、薄緑の煙ったい描写で喫煙を思わせるようにすることで、直接喫煙を描写するよりもより効果的に「喫煙していた」という事実を描写していたと思います。ただ個人的な意見としては「未成年がタバコを吸うのは、後の自分の影響に関しては自己責任」だと思ってるので、正直そこまで慎重に扱う事項なのかなぁ……と思ってますが、まー世の中はそう寛容ではありませんからねぇ。ちなみに私自身は一度もタバコを吸ったことが無いので、この問題の本質的な部分は正直あまり理解はできてないです、ハイ。


そんなような奉太郎にとってはめんどくさい説得を行ったのも、千反田さんが「見つからなかったら校内を探すことになってしまう」という一言もあったのですが、その前の千反田さんの「一身上の都合」が明らかになる場面に深く関わってきます。この喫茶店での一連のシークエンスは正直ここだけで一エントリ書けるぐらいに凝縮した内容*1があるので、個人的にここが良かったと思う部分を端的に書きますが、千反田さんのひたむきな姿に、1話Bパートの事もあってか奉太郎は罪悪感もあってか折れてしまい、千反田さんの手伝いを消極的ながらも買って出ることなる辺りですね。つまりはここで1話の感想エントリにおいて「千反田さんを半ば騙してしまったという重み」はここに跳ね返ってくることになります。


他にもDTBの黒の目みたいな目をしたとたんに、凄まじい推理力を発揮する奉太郎とか、対価は「省エネ生活を送れない」ことか……みたいなそんな風に見えてしまう面白い描写とかもあったことを記して締めとさせて頂きます。

*1:例えば奉太郎がどのタイミングでコーヒーを飲み干したのかとその描写の意味とか、お客さんが読んでいた新聞と千反田さんが話す内容との絶妙なリンクの仕方とか、いつの間にかカウンター側のお客さんが居なくなっていた描写とその意味とか、他にもいろいろ探せば出てくるかも知れません、それぐらい濃いシークエンスでした。