「段取り」と「物語構造」とニャルアニ

過去に省略演出とその欠点についてのメモで書いたことに似てるけど、プロットや脚本単位で「省略すること」を考えながら、何故かまっつねさん(id:mattune)のブログの過去ログを漁ってみたところ、出崎と紫の上物語 - まっつねのアニメとか作画とかに「段取り」の説明があり、これは「省略すること」=「段取り」ですべて説明が付くな! と思ったのでちょっと書いてみる。(この説明自体が既に段取り)



そうか、まっつねさんが使ってた「段取り」って、出崎監督が元だったのね。

演技に入る前の予備動作を描いちゃいけないんだ。それを全部落とすわけ。

話もそうだよ。段取りやっちゃったらさ。それだけで無駄な時間を使うし、

大事な部分まで到達できないんだよ。大事な部分をいっぱい描きたいわけだからね。


出崎と紫の上物語 - まっつねのアニメとか作画とか
http://d.hatena.ne.jp/mattune/20090314

この理論を使えば、何故ラノベ原作モノがだいたい煮え切らない感じの作品が多いのか? 何故ニャルアニが面白いのか? が分かると思う。



また、この「段取り」という考え方は、プロット、物語構造と似ている。過去にid:tomatotaro氏が触れていた「中層」に関してそのものズバリ書かれてるので、そのまま引用してみる。(この説明も段取り)

表層:ショートコント、ライブ、サッカー、萌え、雑談
中層:プロット、物語構造、本筋 (なんとか学院シナリオ科や、「小説の書き方」的なものに書いてある創作論)
深層:歴史性、データベース


メモ インスタントな感性 - ガタガタ言いなさんなって
http://d.hatena.ne.jp/tomatotaro/20100607/1275911347


つかもうめんどいんで、簡単に説明してしまえば、前提条件(=予備動作)さえある程度飲み込んでさえいれば(≒オタク知識がそれなりにあれば)設定説明や段取りやプロットみたいな組み立ても全部いらんのですよ、と。削り削ればブラックロックシューターや、放課後のプレアデスみたいなのが出来るんだろうけど、そこから更に極限まで削ったのがニャルアニなのでしょう。



そもそも、ニャルアニはそもそも「前提」が存在せず、変な宇宙人のニャル子とツッコミ担当の真尋が、ただ夫婦漫才みたいな事や、クー子がボケたりするだけで、そこに設定説明はほぼ皆無です。*1もちろん本編の長さから考えれば、「前提」を説明する予備動作自体を行う暇など無いんだけど、ニャルアニの場合はむしろそれを最大限に生かしているフシがある。見れば分かると思いますが、説明されたってされなくったって、夫婦漫才の面白さには殆ど変化は無いですから。


むしろだらだら説明されすぎると、動作(ニャルアニの場合、見たいボケ)から次の動作まで時間がかかりすぎるのが難点なので、むしろここまで端折られた方が有難いという側面もあります。この点で某禁書は設定説明が事故レベルの進行妨害*2になってるのも事実ですし、これはゾンビですか? においても若干説明過多が見られて勿体ないと思う場面がチラホラと……脱構築的な部分が面白いのに設定過多しちゃうなんて勿体ない、みたいな感じで。


ちなみにいうと、もちろんニャルアニの1話単位のお話が、1つの夫婦漫才みたいな感じで収録されているので、物語構造などあるはずが無いのも事実です。*3




関連過去エントリ:
省略演出とその欠点についてのメモ
http://d.hatena.ne.jp/str017/20100717/p3
ブラック★ロックシューター
http://d.hatena.ne.jp/str017/20101212/p1
這いよる! ニャルアニ
http://d.hatena.ne.jp/str017/20101210/p1

*1:ただし、ニャルアニ1期最終話を見れば分かりますが「長い前振り」という意味で設定説明が行われる事はあります。

*2:私は設定説明による事故レベルの進行妨害自体が、ある種のボケと解釈して視聴はしておりますが…w

*3:ただし、ここまで細分化しても「物語が無い」とまでは言い切れないと思います……この辺はまだ理屈として練り切れてないので、今は何も書けませんが(汗