夏目友人帳 第12話(再放送)

今日の感想はちょっとまとまりがありません。
 
今回のお話は、夏目ははじめて自分を拒絶しなかった人達を守りたいと思ったのと、そんな夏目をヒノエが窘め、塔子さんが夏目を本気で叱る、という話。
 
まず、大前提として夏目友人帳は特殊な作品だと思う。既に失われてしまったモノ、あるいは得られないからこそ諦めてしまったモノ。そんな「拒絶」からの回復こそがこの作品のテーマなのだと思う。夏目貴志はこの世の者では無いモノが見えてしまうことによって、世間から社会の空気から拒絶されてしまう。あたかも「お前はこのセカイに必要がないのだ」と言うが如く。伸ばしても伸ばしても、手は届かない。手の範囲に居るのは妖怪だけ、人間ではない。
 
そんな人間と妖怪、両方とも相容れない夏目、ある日そんな彼の運命を変える運命が訪れた。にゃんこ先生が封印から解かれた事と、レイコが残した夏目友人帳、そんな厄介な「2人」が彼の運命を変えることになった。友人帳と関わりのある妖怪達には常にレイコと呼ばれ、事件に巻き込まれていく。
 
しかし、彼はレイコではない。彼の足で進んでいく。にゃんこ先生や周囲の人達の力添えが彼の足を加速させる。喪失ばかりに目を取られてはいけない、歩むからこそ彼は歩めるのである。「歩み」のエピソードで丁度到達点にあるのがアニメオリジナルである「心色の切符」、このエピソードの後から夏目は自ら進んで歩み始めたのではないかと推測する。また、この構図とは逆に9話にて、子狐がむこうから迎えに来る「子狐のぼうし」という話もある。
 
喪失から抜け出せた夏目は、他の妖怪達の手助けをし、喪失から抜け出させる。「仮面」の演出はその為にあるのだろう。その到達点は10話の「アサギの琴」だろう。ここでじゃのめさんと夏目が帰る道が違ったことも、また何かの暗喩かも知れない。
 
にゃんこ先生のエピソードは、まあガス抜き回として、上記を踏まえ本編を再考してみる。すると幾度か夏目の命が狙われたという事はあったが、少しずつ危機が訪れ、そして周囲に危険が及ぶ可能性のある事はあまり無かっただけに、ここで夏目にある決断が迫られる。「何とか、この人達を守らないと」と思いつつ夏目は家を出て行ってしまう。この話と対になり、かつ一歩前進する話は、続 夏目友人帳の10話「仮家」になるが、一応1期の話なのでここでは割愛。
 
妖怪達を経て、自分と同じ見える友人、お節介な女友達、同じ境遇ながら違う考え方を持つ祓い師。そしてようやく塔子さんに出番が回ってくる。人間の中ではじめて心から守りたいと思った人達、しかし夏目は自身を大切にしないことから、何の因果か塔子さんに心から叱られる事になった。手を伸ばしても届かないはずの世界が、もうそこに見えている。しかし夏目は前身しつつも、まだ自分から手を伸ばそうとしない。しかし最初の頃に比べたら夏目はずいぶんと成長をしている。いつかは、きっと大丈夫だろう。
 
さて、来週は最終回。今までの夏目友人帳に相応しく全員集合する話。この作品はとことん私の期待を更に上回る形で答えてくれるから、言いようがないほど好きだ。いや、大好きだ。