けいおん! 第2話 と物語的な正しさと原作との間のバランス感覚

今回の感想を原作の情報をあえて無視して述べると「みんなで頑張ってバイトしてギター買おうとしたら、お金持ちがその幻想をぶち壊しました、めでたしめでたし」という解釈にしかならない。
 
その中で劇中の情報量の多さはその観点から見ればどこかおかしいものに映る。つまりは萌えアニメという単位でこの作品を観測すると、見せたいモノを曖昧に見えて、作画と背景とキャラの焦点が同じ方向に定まっていない為、作品の中心がぼやけて見える。面接官風に言うと「で、このアニメのアピールポイントは何ですか?」と問う感じ。この事に関しては、id:hapze-23_45氏が以下の引用部分以外にもさらに詳しく述べられているので、そちらを参考にしていただきたい。

確かにこの作品は映像演出はなかなか凝っている。だが凝った映像を褒めることが、この作品にとって名誉なことなのだろうか?
 
つまり何が言いたいかというと、このハードな映像と薄いお話が噛み合っていないのである。
 
俺はこんな頭の悪い考察させる映像なんかより、言語化できないほど感覚的で楽しげで嘘まみれの映像だった方が、この内容皆無の日常コメディ萌えアニメには向いていると思うのだ。
 
けいおん!』はまだ甘い - かわりな色
http://d.hatena.ne.jp/hapze-23_45/20090411/p1

しかし、他の某サイト見て分かったけど、けいおんは原作よりも若干物語性を加えている事が分かる。

いつの間にか唯はみんなで演奏することを夢見ていて,ギターの練習に明け暮れている.
 
正直,唯がいつ「みんなで演奏すること」を求めることになったのか不明である.
 
この原作の不備をアニメでは見事に回収している.
 
第二話のギターを買うためにみんなでバイトをするというエピソードで,唯は,みんなと一緒にひとつの目標(音楽・バンド)に向かって努力するという楽しみを経験し,また,みんなが「惚れた楽器をどうしても手に入れたい」という唯の気持ちにも理解を示してくれる…同じ気持ちを共有できる仲間であることを実感する.
 
何故彼女たちはバイトをする必要があったのか? 〜けいおん!〜 - WebLab.ota
http://d.hatena.ne.jp/n_euler666/20090410/1239379848

つまりは、ゆいの動機を強める為にバイトという話を導入したのは良いが、その為に話の展開に対してオチが若干かみ合わない感じになったと推測できる。
 
物語性の提示を曖昧にしてる理由としては、導入部で引かれない為か? 「温いのを楽しみたいのに、うにょうにょ動かしたらなんか気持ち悪い。」と思ったが、物語性を強く出したいという観点から言えば今回の選択は「正しい」と言える。そしてここでまたもや以下引用。

このアルバイトのくだりで、大事なのは、四コマ漫画では許される表現(文法)が、アニメにすると違和感があるという感覚を、吉田玲子や山田尚子がしっかりと持っているということだ。(中略)
 
しかし、唯のバンドへ強い気持ちの起源という観点から考えると、「みんなで一生懸命アルバイトをして、購入」という方が、強くなる。なぜそうしないのか。そこは、原作準拠の京都アニメーションといったところだろう。(尺の問題ではないと思う。尺は、音楽バックの回想にでもすればいいし、値段も25万円じゃなければ非現実的ではない。元の15万なら、高校生4人で150000/24000≒6日で溜まる)(花田さんや黒田さんあたりなら、たぶんアルバイトで買わせる)
 
けいおん! ポテトと値切りのくだりの解説 吉田玲子の本領発揮 - karimikarimi
http://d.hatena.ne.jp/karimikarimi/20090417/1239895361
※強調文は引用元に基準。

ここで挙げたい点はふたつ、ひとつは今回の話が、原作の話と物語的な正しさの絶妙なバランス感覚で成り立っている事。もうひとつは私が過去でエントリでも書いた「花田先生」の事である。
 
まずバランス感覚の話だが、今回の話は「原作通り」「バイトして入手」「バイトしてから原作通り」のどれをを取るにしても、かなり難しい選択だといえる。バイトせずに値切ったらゆいがギターを労せずに手に入れて、物語的な正しさが無い流れになる。かといえばバイトのみで入手してもまなb・・・じゃなかった、流れ上くどい感じになり一見さんが離れる可能性がある上に、京アニというブランド性から見ると非常に不味い原作の根底部分を改変してしまう事になってしまう。
 
以上の事から考えて、バイトとオチがかみ合ってない事は、上記の事と比べるとまだ些細な問題だともいえる。この辺京アニ、というか吉田玲子さんと山田尚子さんの絶妙なバランス感覚が持ちえる技だろう、と推測する。
 
さて、バランス感覚と来て、だいたいの人は次の流れに察しが付くだろう。そう、ここで4話以降の花田先生の起用である。私は以前こんな事を書いた。

では、けいおん! にて花田氏の脚本が適応されるとどうなるのか? けいおん自体を見てないので具体的には指摘しづらいが、極端なケースを推測すると「あの4人が幸せになれば、他の周囲はどうでもいい」というような脚本になる恐れもある、だが構成として登板しない場合はそこまでに至れない可能性の方が高いため、そう心配することも無いだろう。だが、欲望レベルまで読み取ることによって、彼女達のマイナス面が掘り下げられる可能性が一番の心配ではあるが……
 
花田十輝氏の脚本の特徴について - 流し斬りが完全に入ったのに
http://d.hatena.ne.jp/str017/20090412/p4

もちろん、と言ったら失礼ではあるが、花田十輝氏にそのバランス感覚があるとは思えない。ここで物語をどう押し進めたいかの意図がまだ見えてこないが、少なくとも物語的な正しさを重視している為、原作の展開が変わる可能性は十分秘めているだろう。
 
と、この辺で現時点で書けること一応全部書いたので、まあ、まっすぐゴーな感じで見守っていきましょう。今後の展開の予想については、後でなんか書くかもしれません。