劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者

2008/03/01 微調整、各所修正
過去の感想はこちら
http://d.hatena.ne.jp/str017/20050723
 
文芸面が足りないと誰かが言っていましたが、むしろ有り余りすぎて変なベクトルに向かいすぎた、という感じが。
トゥーレ協会の面々や(史実から変更してる部分もあり)メッセージ性を各所に込めている等、変に凝ってるので一回見ただけでは分からなかったり。
ただ、現実世界と錬金世界の色使いの違いでどっちの世界か分かるようになっているので(現実世界は灰色で、錬金世界が色鮮やか)この色合いを使って、その世界の人々の活気や心象を上手く表せてました。
 
まあ、色使いの話からちょっと飛躍しますがエッカルトの言うとおり、錬金世界は本当に「シャンバラ」だったのでしょう。と、いっても飽くまで第一次大戦終了後のドイツと比較して、の話ですが。
 
その「シャンバラ」から来たエドから見た現実世界の人々は貧困のせいで殺気立ってイデオロギーに支配されており、その様子が錬金世界の価値観から見れば、とてもおかしなモノに見えたのでしょう。
これに関しては、私自身はエドとドイツの人々どちらにも正当性がありこの手の問題は答えが出ないと思っております。
ただ、そこからエドの立場を考えると、ジプシーであるノーアが言った「あなたにも故郷が無い」と言った言葉にかかって来たりします。
 
過去の感想で私はこんな事を書きました

ドイツ側で最初から最後まで味方なのは
大総統のそっくりさんと、ヒューズの奥さんのそっくりさんだけだったという驚愕の事実が、何気にエド人運無いなーと

大総統のそっくりさんであるフリッツ・ラングユダヤ人、ノーアはジプシー、皆「故郷が無い」人々だったりします。(ヒューズの奥さんのそっくりさんであるグレイシアはドイツ人ですが…)
つまりはエドも「故郷が無い」立場であり、その事からエドは「ここ(現実世界)は夢の世界なのかもしれない」と諦めがエドの心を占めるようになったりします。
 
まあ、その部分からアルフォンス・ハイデリヒと反目したりした後、最後に「僕たちは夢の世界の人間じゃない!」と言われ、目を覚ますんですが。
 
まあ、ラストは前の感想通り、今までの鬱憤を晴らすかのごとくの展開になります。ただそれを見せるために罪や業をエルリック兄弟に押し付けた形になったのはどうかなー、と思ったり。
そんでもってそこから「(扉を)開けちゃいけない」→相互理解の放棄
という結論に持っていったのもどうかと。
個人レベルでそういう結論に持っていくのは別にかまわないと思うんですが、作品レベルでその結論は不味いんじゃ…
 
あとは……やっぱりウィンリィですな。
別に兄弟は業を背負うという意味で現実世界に行くのは構わないんですが、ウィンリィを連れて行かなかったのは、意味合い的には分かるのですが、辛い。
やっぱり文芸面で凝り過ぎてる事もあって、視聴者の納得よりも作品の完成度の高さを優先してしまったという面があったと思います。
別に敷居が高く作品性を重視する作品ならそれでも良いんですが、ハガレンは「エンターテイメント」を重視する作品……だった筈です。
 
やっぱね、會川昇ティーンズ向けの作品やっちゃ駄目だよホント。